一樹が大切にしていること
本格的に書道教室を開こうと考えたのは、
ある生徒さんとの関わりがきっかけでした。
出会った当時、彼女は小学校中学年。
私はまだ教室経験がありませんでしたが、
友人から、私の知り合いの娘さんに書道教室をしてほしい。
と個人的にお願いを受けて教えることになりました。
「すごく内気な子で、集中力もなくて…。
教室の間、じっと座っていることも無理かもしれません」
そんなふうに言われ、彼女の姿が自分の幼少期と重なりました。
私もコミュニケーションがとても苦手で、
先生の話も耳から耳へと抜けていく子どもだったからです。
自分と同じような子に寄り添いたい。
絶対に楽しいと思える教室にするんだ、そう強く思いました。
まずは、たくさん話しかけることからスタート。
彼女が好きなこと、興味がもてることを探りながら
アプローチの方法を試行錯誤しました。
そのうち、「頭で考えるよりも感覚が優れている」と分かったので
教室の前に「筆体操」を取り入れることに。
「手」を「筆」に見立てて動かし、運筆の感覚をからだで覚える体操です。
すると、いきなりメキメキと上達!
4年目を迎えた今、彼女は笑顔で会話するようになり、
教室中に休憩以外で席を立つことも一度もありません。
この経験をもとにした書道教室「一樹」では、
生徒さんに一対一で向き合い、最適な指導法を考えます。
それがうまくハマった時が、佐竹有沙子のいちばんの喜びです。
「きれいな文字を書く」ことは目標のひとつですが、
もっと大切なのは「楽しんで書く」こと。
一人ひとりの個性を大らかに受け入れ、
そのうえで文字の基本の指導や創作につなげていきます。